ことり

 ことりは公園にすんでいた。たった一人。広い公園の中に。たまに会いにくる人はいても、たまに会いにいく人はいても、大半の時は一人で過ごしていた。
 ある晴れた春の日。ことりは広場へ出た。
 空は雲一つなく、海のように真っ青。太陽から降り注ぐ光は、日々の疲れを癒してくれるような暖かい光。そんな日曜日だから、広場には沢山の親子が遊びに来ていた。
 ことりが一人、公園の端にあるポプラの大木の木陰に座っていると、小さな女の子が近寄ってきた。両親の姿は見えなかった。
「ねぇ、何をしているの?」
 ことりは女の子に尋ねた。
「お花を探しているの」
 女の子は人なつっこい笑顔でことりに言った。
「それなら僕、案内してあげるよ。この公園のことだったら何でも知っているからね」
 ことりは立ち上がって女の子の手をとった。
 女の子はこれから見るであろうお花畑に心躍らせてい

るようで、にこにこと自作の歌を口ずさんでいた。
 二分位、二人は公園の中を歩いた。普段はほとんど人の通らない道も通った。
「まだ着かないの?」
 女の子は少し不安げな顔をした。
「大丈夫。この道が一番近道なんだよ」
 ことりはにっこり笑い、ツツジの茂みを手で分け開いた。するとそこには色とりどりのタンポポ、レンゲ、スミレ、そして見たことのない花々が咲き乱れるお花畑があった。
「うわぁっ」
 女の子は目を輝かして駆け出し、早速花を摘み始めた。初めは赤い花。次は黄色い花。その次は…………。女の子は夢中で花を摘み続けた。しばらくすると、腕は花でいっぱいになった。
 女の子は自分がことりを忘れて摘み続けていたことに気付き、辺りを見回した。ことりの姿は見えない。急に心細くなり、探そうとしたそのとき。何者かが女の子の口もとに真っ白なハンカチを押し当てた。

「っ!?」
 女の子はすぐさま後ろを振り向こうとしたが、強い力で押さえつけられ、身動きがとれない。そして女の子は意識を失った。

 ことりの目の前に大きな白い袋があった。ことりが白い袋のそばに腰をおろした時、ことりの持ち物の一つが震えた。
「はい。はい。いつもありがとうございます。大丈夫です。ええ。ではいつもの所で」
 ことりは電話を切り、白い袋を肩から下げる。
「行くか」
 「子捕り」はそういうと、ゆっくり公園の入り口の方へ歩いていった。

後書き
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